警察庁のTor遮断要請に関する英文記事訂正のその後

昨日のブログで、ある英文記事の翻訳ミスが原因で「日本の警察がISPに対してTorを遮断するよう要請している」という間違った情報が海外に拡散し、また再度翻訳されて逆輸入された...という流れを書かせて頂きました。

思うに、翻訳された記事に違和感があればその原文を確認する、というのは「英語→日本語」の場合には敷居も低いのですが、「日本語→英語」の場合だと海外の方にはなかなか難しいのかもしれません。今回のように、ひと目でわかる翻訳ミスであれば、指摘さえすれば比較的短期間で訂正されるようですので、このブログの読者の皆様も気になった記事は英訳チェックをぜひ。

該当英文記事は最終的に、タイトルが「Correction:」で始まるものに変更され、また、記事末尾には修正個所についての説明文も加筆されましたので、ネット上で引用している方々への説明もかなり楽になったかと思います。

引用元の英文記事が訂正されたということで、次はそれを引用していた海外メディアの話になります。毎日新聞英文室からは、既に BBC、WIRED.co.uk、ZDnetに対して修正を要請し、BBC*1とWierd*2については既に記事が修正されたとのご連絡がありました。

先ほど確認させて頂くと BBC は修正更新の日時について記載があるだけですが、 Wired.uk については、記事末尾に:

[UPDATE 24/04/2013] This article, and its headline, originally stated that the panel's recommendation that "the internet provider industry and other entities" referred to ISPs being asked to block the use of Tor. It has since been clarified that the NPA wishes for individual site administrators to be responsible for blocking Tor users.

との説明付でかなり丁寧な対応。ただし、その日本語訳を掲載しているWIRED.jp*3 の方はまだ修正されていません。

残るZDnetは、「Japanese ISPs to block Tor, users 'guilty until proven innocent'」と、この3つの中では一番扇情的なタイトルなので、ここが果たしてどういう対応をするか気になるところです。

Anonymousを名乗るYouTube*4にも、

UPDATE: Mainichi has corrected their article. ISPs will be helping Site Admin to block Tor. Blocking will not occur at the ISP level.

とのコメントが動画投稿者の名義でアップされており一安心。一方、日本の警察に撤回を求める署名活動*5についてはまだ継続中のようです。

毎日新聞によれば、今後も検索にヒットしたものにはすべて元記事に誤りがあったことを伝えていくとのことでした。ネット上に一旦拡散してしまった誤情報を修正するのは大変な作業です。ただ、今回これだけの速度で誤情報が広まったのは、それが「重大な情報であって、早急に警鐘を鳴らす必要がある」と感じた方々が多数いたからかと思います。それらの方々が、同様な熱意をもって元記事が訂正されたことを伝えてくれるためにはどうしたら良いのでしょうか?今回のような件は、発信元がわからない怪情報などではなく、大手報道機関がきちんと修正記事を参照可能な形で公開しているわけですから、なにか現実的な解がありそうに思えるのですが。